A24とGoogleのAI提携:注目すべきはお金の話ではありません
GoogleがA24に7,500万ドルを出資し、映画製作者向けのAIツールを開発することになりました。
A24については説明するまでもないでしょう。『ムーンライト』も『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』も『ヘレディタリー/継承』も、この会社から生まれた作品です。この10年ほど、A24はアメリカでいちばん「スタジオらしくない」スタジオであり続けてきました。低予算、監督第一、風変わりな題材。そして頼みにしてきたのは、ただ一つの評判——「この会社の映画は流れ作業の製品ではない」ということです。
だからこそ、そのA24にこのお金が入ったことは、金額そのものから想像されるよりはるかに大きな騒ぎをアメリカで引き起こしました。
そして、この話で本当に興味深いのは、おそらくお金ではありません。アメリカの観客がどう反応したか、です。
まず、向こうの空気について
アメリカに住んでいない方には、ここがいちばんなじみのない部分かもしれません。アメリカでは、AIに対する一般の人々の態度は懐疑的で、場合によってはあからさまな敵意です。
アメリカの世論調査機関ピュー・リサーチ・センターが今年行った調査によると、30歳未満のアメリカの成人のおよそ半数が、AIは社会に害をもたらすと考えています。言葉に注目してください。「リスクがある」ではなく、「害」です。
アメリカのネットでは、すっかり定着した悪口も生まれています。AIスロップ(AI slop)です。AIで大量に量産されたもの——安っぽくて、似たり寄ったりで、誰も手間をかけていないのが見え見えの画像、記事、動画、音楽、そのすべてを指します。今ではこの言葉は侮辱であり、かなり重い侮辱です。何かをAIスロップと呼ぶのは、「見る価値もない」と言うのと同じことです。
決定的なのは、この二つの事実がぶつかったことです。A24のブランドは、まさにそういうものを最も嫌う人たちの上に築かれています。 コアな観客は35歳未満で、映画にうるさく、自分の好みで自分を語る人たち——ピューの数字でAIを最も信用していない層と、ぴったり重なります。
だからニュースが流れたとき、多くの人の最初の反応はため息でした。「A24まで、これからAIスロップを作り始めるのか」と。
これが、今のアメリカの映画製作者が置かれている環境です。AIに触れる動きは、どんなものであれ、まず観客という関門を越えなければなりません。規制当局ではなく、観客です。その感情に共感する必要はありませんが、それが存在すると知っておくことで、A24の次の一手の意味が読み取れるようになります。
A24自身の言い分
A24のスコット・ベルスキーが、注目に値する発言をしています。まさにその層に向けて語ったように聞こえるからです。
彼の主張はこうです。AI企業は最初から売り込み方を間違えていた。彼らが売ったのは「より安く、より速く」——クリエイターがいちばん聞きたくない二つの言葉です。翻訳すれば「あなたは削れる」という意味になるからです。本当に価値のある使い道は、クリエイティブの主導権を手放さずに、リスクを取る挑戦を支えることであり、作るべきものは、プロンプトを入れたらコンテンツが出てくる、誰もが居心地悪く感じるあのAIとはまったく別物であるべきだ、と。
つまり、彼らが作りたいのは生成機ではなく、道具だということです。
最高のAIは、観客の目に触れない部分にある
ここからは私自身の意見です。そして、この投資が賭ける価値のある方向は、これしかないと思っています。
映画においてAIがやるべき仕事は、すべてカメラが回る前に行われ、完成した作品には1コマも残りません。
- 絵コンテ——撮影前にシーンを描き起こし、いくつかの撮り方を試す
- キャスティングボード——ある俳優の組み合わせが同じシーンでどんな感じになるかを事前に見る
- 美術とセット——実際に建てる必要があるものと、決してフレームに入らないものを見極める
- 脚本分析——キャラクターに一貫性があるか、動機に穴がないか、物語の弧が成立しているか
- ロケハン——同じ場所が別の季節、別の時間帯にどう見えるか
- スタントのプリビズ——誰かが実際に飛び降りる前に、安全性とコストを詰めておく
- 脚本の香盤作成——小道具、ロケ地、昼夜のシーンをすべて洗い出し、撮影スケジュールを組む
- 素材管理——編集中に300時間分の素材から特定の1カットを探し出す
これらの仕事には共通点が一つあります。どれも作る仕事ではなく、考え抜く仕事だということです。
俳優も、脚本家も、撮影監督も、一人として置き換えません。置き換えるのは待ち時間です。スケッチを待つ時間、表計算を待つ時間、誰かが300時間の素材を頭から見終えるのを待つ時間。そして映画業界では、待ち時間はお金であり、お金とは「そのアイデアを試す余裕はない」ということです。
この線引きはきれいです。観客が心配しているのはAIが創作を奪うことで、このリストに創作は一つも入っていません。
私の立場を明かしておきます
トイレダッシュ (RunPee) は私一人で作っています。コードを書くのも、デザインをするのも、ユーザーからのメールに返信するのも、一人です。20年間、自分でやってきました。
このアプリの収入では、食料品代すらまかなえないこともあります。翻訳者も、デザイナーも、2人目のエンジニアも雇えません。
AIが登場してから、私は以前1年かけていた量の仕事を1か月でこなせるようになりました。
これは宣伝文句ではなく、私の実際の状況です。ですから、この件についての私の見方には偏りがあり、その偏りは認めます。私は、こうした道具に崖っぷちから引き戻された側の人間です。 大手スタジオがAIで節約するのは予算です。私がAIで取り戻すのは、そもそも続けられるかどうか、なのです。
慎重になるべきところは、本当に慎重になるべき
大げさに言うつもりはありません。
AIは二つのことを同時にもたらすでしょう。AIのおかげで生き残る人もいれば、AIのせいで仕事を失う人もいます。医療での恩恵と職業への打撃は、どちらか一方ではありません。同時に起き、しかもたいていは別々の人に降りかかります。心配している人たちは理解が足りないのではありません。私とは違う計算をしているのです。
もう一つ。今日「AIはプリプロダクションしかやらない」と言っている人も、2年後にはその線がどこか別の場所に押しやられていることに気づくかもしれません。技術の境界線は、誰かが約束したからといって止まりはしません。
ですから、本当に注目すべきはこの投資の金額ではなく、A24がそのお金で何を作るかです。クリエイターに失敗できるチャンスをもう少し与える道具か、それともコンテンツ製造機がもう一台増えるだけか。
A24は前者に賭けています。あの観客とあの評判を考えれば、後者に賭ける余裕はそもそもないでしょう。
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